シクロデキストリンとは
“シクロデキストリン” ってなに?
シクロデキストリンは、デンプンにある種の酵素を作用させて得られる環状オリゴ糖であり、グルコースがα-1,4結合で環状に連なった化合物で、 天然にも存在します。グルコースが6、7、8個環状に結合したものを、それぞれα-、β-、γ-シクロデキストリンと呼んでいます。 天然には、さらにたくさんのグルコースが環状に結合した大環状のシクロデキストリンも存在しています。
”cyclodextrin” を有機化合物日本語命名法に基づいてカタカナに直すと、”シクロデキストリン” となります。 一方、英語の発音をカタカナで表記すると “サイクロデキストリン” となります。 “サイクロデキストリン”を採用している分野もありますが、本学会では、命名法に基づいた “シクロデキストリン”を正式名称として採用しています。
シクロデキストリンは、どんな分野に利用しているの?
シクロデキストリンは、分子の中心に存在する空洞に分子を取り込む性質があります。この性質を「包接」と呼びます。このシクロデキストリンの包接現象は食品や医薬品をはじめとした様々な分野で広く利用されています。
例えば、”わさび”などに含まれる揮発性の高い香りや辛みの成分が、食品から揮散しないようにシクロデキストリンの包接作用が使われています。
また、水に溶けにくい医薬品を水に溶けやすくする為に使われたり、不安定で分解しやすい医薬品を安定化する為にシクロデキストリンが利用されています。シクロデキストリンの包接作用を利用して”たばこのにおい” や “焼き肉のにおい” を消臭する様々な製品も発売されています。
シクロデキストリンの包接現象は、どんな分子に対しても起こるわけでなく、シクロデキストリンに”包接されやすい分子” と “包接されにくい分子” とがあります。これは、あたかもシクロデキストリンが分子を見分けているような現象であり、この現象を 「分子認識」と呼びます。近年、研究が活発になってきた超分子化学の分野で最も重要な現象の一つにこの分子認識が挙げられ、シクロデキストリンの分子認識能を利用した様々な超分子が合成されています。